
原発の近くで暮らす住民に現金を支給する国の「原子力立地給付金」制度で、受け取りの辞退件数が、2011年3月の東京電力福島第一原発事故を境に前年度の2倍近くに増えたことが朝日新聞の調べでわかった。給付金は「原発推進のための利益誘導」との批判があり、制度への抵抗感が立地住民の間で広がり始めている。
原子力立地給付金は電気料金を原資に、国から原子力関連施設の立地、周辺自治体へ支払われる「電源三法交付金」の一部。給付事務を担う電力会社を介し、銀行振り込みや郵便為替で住民や企業に公金が直接渡るのが特徴だ。電気の契約形態にあわせて、家庭向け(電灯契約)と企業向け(電力契約)の2種類があり、金額は原発の発電能力などで決まる。
朝日新聞は家庭向けに給付金を払う14道県に取材、情報公開請求し、給付状況を調べた。結果、給付対象は103万件で、11年度の給付実績は総額76億円。年間1件あたりの最高が青森県東通村の3万6千円、最低が茨城県茨城町と鉾田市(旧旭村地区)の2172円だった。