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"それにしてもの快挙に、歓喜の言説とともにいろいろと、女子サッカーの境遇を嘆く声がわきおこり、どうにかしたいといった意見が飛び交った。結構なこと。素晴らしいこと。でも忘れてはいけない。2004年4月24日..."

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それにしてもの快挙に、歓喜の言説とともにいろいろと、女子サッカーの境遇を嘆く声がわきおこり、どうにかしたいといった意見が飛び交った。結構なこと。素晴らしいこと。でも忘れてはいけない。2004年4月24日。国立競技場に3万人を集めて行われた、アテネ五輪の出場をかけたアジア予選の準決勝で、北朝鮮を敗って出場権を獲得した時、日本中が沸いて女子サッカーへの注目が集まった。レジ打ちをしながらサッカーに勤しんでいる選手もいることが、広く知れ渡ってその境遇への同情が集まった。何とかしてあげてという声も起こった。その結果。何が変わったか。変わらなかった。変わっていたら今もなおそうした声が起こることはない。なでしこリーグの観客が300人程度といった事態も起こらない。

 アテネに続く北京五輪では、何とベスト4入りというこれも日本のサッカー界にとって驚きの結果、男子のメキシコ五輪銀メダルに続く快挙を成し遂げた。なでしこジャパンにも注目が集まったが、何が変わったかというとむしろ悪化した。名門のTASAKIペルーレが休部し、日本代表に関わった選手たちが引退や移籍を余儀なくされた。誰も助けられなかった。救おうとする企業は現れなかった。幸いに神戸にはINACという新しい企業があって、女子サッカーの支援に乗りだしていたから、何人か移籍を果たしたものの、名門チームの消滅は、女子サッカーが1990年代末期と同様に、景気の波に左右されやすい存在であることを浮き彫りにした。現在もまた、不慮の出来事とはいえ東京電力が所有していたTEPCOマリーゼが、消滅の聞きにあって代表級の選手、将来を嘱望された選手たちが行き場に悩んでいる。

 何とかしてあげて、という声を上げることは難しくない。今なら何とかしようという声が、政治を動かし社会を動かすだけの背景を持ち、力を持って響くから。けれども、それとて一過性に過ぎないことは過去の事例から明か。喉元を過ぎれば熱さは薄れて女子サッカーは日常に戻り1日の多くをアルバイトや仕事で埋め尽くし、その明いた時間をサッカーに打ち込む繰り返しが続いていくことになるんだろう。何とかならないのか、という意見には同意したいけれど、現実、女子サッカーを見てお金を払い、あるいはスポンサー企業を知って購買に向かう人の数が、女子サッカーの選手たちの待遇を補えるだけのものにはならないし、多分、今のムーブメントをバックにしても、一部のチームに観客が集まるだけで、全体を運営していくだけの規模にはならないだろう。それが可能なら、女子バレーボールやソフトボールのように、それで“食べて”いける選手が、チームがもっと増えていて不思議ではない。

 1990年代前半の、ややバブルが残った時代にすら追いつかない今の停滞を、ワールドカップの優勝であてっても、すぐにどうにかできるとは思えない。とはいえきっかけには成り得る。何とかしてあげてと叫ぶ人たちが、何とかしようとスタジアムへと足を運び、その面白さを語り、ファンを募ってまた足を運ぶその連続が女子サッカーというものへの認知を増し、お金を出したいという企業なりを増やし、お金を出したいという観客を増やしてチームの運営を充実させ、選手たちの待遇を増していく。その積みかさねだけが、女子サッカーを安定して競技の続けられる、誰にとっても魅力のある競技へと変えて、選手層を厚くし、永遠の強豪を約束する。



- 日刊リウイチ (via katoyuu)

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