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- 小熊英二『私たちはいまどこにいるのか』 - heuristic ways (via nakano)
”だけど日本の場合は、明治維新から一〇〇年以上、徹底して下からの政治運動を抑えつけてきたのが影響していると思います。明治政府は、無知な民衆を優秀な官僚が指導するというかたちで、上から近代化を進めた。それで近代化に成功した面もあるけれど、「政治はお上がやること」という意識を植えつけてしまった。
逆の例でいうと、フランスの学校では「この国は<自由・平等・友愛>の理念を掲げた革命でできた国だ。民衆が立ち上がるのはいいことだ」と教えられる。フランス帰りの帰国子女に聞くと、フランスの高校に二~三年いれば、一回か二回は時事問題でストライキやデモを経験するようです。やり方も先輩とかから伝承されている。この国は革命でできた国だ、市民がデモをやって国を変えるのはいいことだと教えられているから、高校生も自分に国を変える力があると思っているわけです。
フランスだけでなく、韓国やフィリピンも八〇年代に民主化運動に勝利した経験があるから、国民に自信がある。韓国と日本の市民団体が交流すると、「日本人は何であんなに社会を変える自信がないんだ」とか言われるらしい。日本は徹底的に下からの運動を抑えつけて、「国民が何をしても、結局は政府が決めてしまうんだ」という諦念を植えつけるのに成功した。
- 小熊英二『私たちはいまどこにいるのか』 - heuristic ways (via nakano)