シャープが今回発表したのは、あくまでも制作ソフトウェアの無償化であり、作ったXMDFコンテンツをどうやって流通させるかという部分はカバー されていない(シャープがそうしたトータルサービスをビジネスとして提供してもよいのではないかとわたしは考えているが)。出版社が、作成した電子書籍を 既存の流通ルート(代理店に依頼するか、電子書店と直接取引するか)で販売するためのハードルはこれまでと変わらないのである。
課題は残れど「きっかけ」として次の大きな変化を期待
流通に掛かる手間やコストが不変ならば、XMDFコンテンツが手軽に作れるとはいっても、電子書籍タイトルはそう簡単に増えない。逆に、流通の ハードルをクリアできる出版社であれば、XMDF制作ソフトウェアの従来の入手性(出版社限定、価格は20万円ともいわれる)はそれほど大きなハードルで はないし、そもそもその程度はコストとして負担できるビジネスでなければ、出版社・流通側双方でXMDFコンテンツを扱うメリットは少ない。
それならばと、既存の流通に頼らず出版社や作者といったコンテンツホルダー自らが販売するという選択肢もあるように思えるが、そこにはDRMとい う課題が横たわっている。実は、今回無償化が発表されたXMDF制作ソフトウェアだけでは、コンテンツにDRMを適用できない。DRMの適用は、一般には 販売されていない専用ソフトウェアを利用する必要がある。現在販売されているXMDFコンテンツは、DRMによる何らかのプロテクトが設定(あるいは管理 情報が付加)されているが、実際にそれが行われるのは、電子書店のプラットフォームを提供する事業者の段階だ。例えば、ソフトバンクモバイルの公式メ ニューに並ぶ電子書店で販売されているXMDFコンテンツには、ソフトバンクモバイル仕様のプロテクト(DRM)が適用されているが、これはサービス提供 者であるソフトバンクモバイルによって行われている。
結局、何らかのDRMを適用したいと望むのであれば、既存の電子書籍と同様の流通ルートを選択するか、自らがサービス提供者としてシャープから XMDFに対応したDRMのためのソフトウェアを購入できる立場になるかのいずれかが選択肢となる。前者であれば、そのハードルはこれまでと変わらない し、後者であれば、むしろさらにハードルは高い。
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